夜露がぬらす君の頬
月が煌々と照らす公園の芝の上、身動きできない三蔵が自分を押さえつけ、赤い唇を楽しそうに歪める少年を睨み上げていた。 「離せっ!」 頭上に一つにまとめ上げられ、女のように押さえつけられた身体を捩る。 「ダメだって言ってんじゃん。今日こそ俺に抱かれてよね」 つうっと指で三蔵の朱の上った頬を撫で、唇の形をなぞる。 「離せ、くそザル」 言うなり、唇をなぞっていた少年の指に三蔵は力一杯噛みついた。 「…つっ!」 反射的に噛まれた指を振りほどいて、三蔵の頬が乾いた音を立てた。 「ダメだなあ、噛んだら、さ」 血の滲んだ指を舐めて、少年は嗤った。 「その強気が好きだよ、三蔵」 耳元で囁いて、悟空は三蔵の首筋に自分が付けた二つの小さな傷口に唇を寄せた。 最近増えてきた悟空の狂態。 月に何度か飢えた悟空に三蔵の血を与える。 それが、最近、三蔵の血を吸ったあと、三蔵の血に酔ったように凶暴な牙を剥く。 けれど、こんなのは嫌だった。 自分の身体を力尽くで拓こうとするこんな行為は望んではいない。 三蔵は自分の身体に夢中になってきた悟空の押さえ込む力が緩んだことに気付くと、力の入らない足で力一杯悟空の身体を蹴り上げた。 「……さ……ん、ぞ…?」 三蔵の名前を呟いた声とその瞳にいつもの光が見えた。 「さ、三蔵!」 その透明な雫に悟空が驚いて駆け寄ると、三蔵の身体を抱きしめた。 「ど、どうしたんだ?三蔵」 狼狽える悟空の姿と声に三蔵はほっと体の力を抜いた。 「いい…何でもねぇ…」 そう言って、悟空の背中に腕を回した。
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