At Will … |
「…やっ…ふぁ…んっ…」 身体をたどる手が熱い。 「さ…んぞ…あっ…」 切なげに振られる首筋に唇を寄せ、赤い花を咲かせる。 それは神聖な儀式にも似て、震える指先が大切な人を捜す。 「ん…さんぞ…」 名を呼ぶ声に深い紫暗の瞳が返される。 「どうした?」 続く言葉は優しく、腕の中で慣れぬ感覚に怯えを見せる子供の胸に染み渡る。 「ん?」 紡がれた言葉に紫がほころび、柔らかな口づけが降り注ぐ。 「ふぁ…」 再び身体をたどり始めた手と唇に点されてゆく熱。 ゆるゆると下肢に溜まってゆく熱に、沸き上がる快感に子供は桜色に染まってゆく。 身を裂く痛みと押し寄せる快感の波に子供は高く声を上げ、金の光にすがりつく。 「あっ…やぁ、さんぞ…変に、変にな…るぅ……」 より大きな波に飲み込まれてゆく恐怖に子供は何度も名を呼び続けた。
素肌に触れる絹の感触に子供は、ゆっくりと目を開けた。 痛みに歪んだ子供の顔を見ていた紫暗の瞳が、ほころぶ。 「…わ、笑わないでよ」 そう言う顔が桜色に染まる。 「笑ってねぇよ」 そう言いながら身体を起こし、子供と向き合う。
あの岩牢から連れ出して五年。
自分を見つめたまま考え込んでしまった金の光に子供は不安を覚えた。 「…さんぞ…」 小さな声で恐る恐る呼ぶ。 「さん…ぞぉ」 もう一度名を呼ぶ。
子供が自分に抱いていた純粋な思い。
もう、手放せない。
浅ましい独占欲。 醜い欲望。 出口を見つけてしまった思いはもう誰にも止められない。
微かな嗚咽が金の光を己の考えから引き戻した。 「…さんぞ…」 名前を呼びながら子供が泣いていた。 「どうした?」 涙に濡れた頬に手をやると、子供は甘えるようにすり寄ってきた。 「悟空?」 涙に濡れた金の瞳が紫暗を捕らえる。 「悟空、何を泣く?」 とまどいを含んだ声音に子供はふわりと抱きついた。 「呼んだのに…お、俺、呼んでたのに…」 自分が呼んでも返事をしなかったそのことを子供が責める。 「…悪かったな」 柄にもない言葉が口をついた。 「さんぞ、変…」 そう言って、笑った。 「っつてぇ…」 頭を押さえて見やれば、自分の大好きな金色の太陽は、これ以上ないほどに赤く染まっていた。 「さんぞ…三蔵ってば」 赤い顔を背けながら、それでも聞いてくれるその気持ちに子供は、大輪の笑顔の花を咲かせて、 「大好き」 そう言った。 紡がれた言葉に、金色の太陽が夕焼け色に染まるほどの思いを込めて────
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