真っ白なシーツの海に散る金糸。 「…ぁ…やめ…」 濡れた音が止んで、衣擦れの音がざわざわと耳障りな音を響かせたかと思う間もなく、息を呑む悲鳴と肉を打つ音が響いた。 「ぃ…ぁぁ…あっぁあ……」 悲鳴に似た喘ぎに荒い息が重なり、もつれた影がひゅっと息を吸う音と共に撓った。 一瞬の静寂。 やがてもつれた影が離れ、乱れたシーツの上に散る金糸を一房取り口付けが落とされた。
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黄金の檻−前夜 その1− |
「明日はお前も連れて行くことにした。18時に迎えを寄こすから準備しておけ。いいな」 告げた言葉の返事を待たずに影は寝台を軋ませて離れた。 それを待っていたように残った影が寝台に身体を起こした。 仄かな灯りに浮かびあがる肢体は、夜目にも白く透き通る肌と細く儚い線。 引かれたカーテンを開ければ、中天にかかった十六夜の月がその容を照らした。 月光に浮かび上がるその容は、神がその手腕を持って創造したかのよう。 伏せた睫毛がその白い頬に青い影を落とす。
彼は虜囚だった。 彼を買った男はコレクターだった。 そして、二次成長を見せたその日、彼は男によって身体を拓かれた。 成長する彼と共にその美しさはいや増し、切ることを許されない金糸は彼の身体を覆った。 世間を知らず、ただ男のコレクションとして暮らし、妄執の贄にされて、彼はその名前すら呼ばれず、黄金溢れる屋敷に囚われていた。
それが、彼の暮らす屋敷の異名。 美しき虜囚の名前は───三蔵という…。
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