まつげ

伏せた睫毛が頬に青い影を落とす。
たくさん愛して貰った身体がまだ熱くて、体中がまだ、触れた少し冷たい手を覚えてる。
上り詰めたその熱に、どうにも抗えなくて、目の前が真っ白になって、そのまま・・・・・。

微かな温もりに寄り添うように身体を寄せた拍子に目が覚めた。

見上げる顔は窓からはいる淡い月の光に照らされて、月光が形を作ったみたいに見えた。

いつもは太陽の光を反射して、綺羅らかに輝く金糸は、月光の光で少しくすんだ、それでも柔らかく輝いている。
雪石膏を思わせる肌は、青白く作り物めいていても、触れた肌からは確かな温もりと鼓動が聞こえて。
そして何より、常に引き結ばれた唇も、顰められた眉も、今は自然なカーブを描き、穏やかな色に包まれていた。

「…きれぇ…」

ほうっと、吐息で呟けば、不意に長い睫毛が震え、紫暗の華が咲いた。

「…どうした?」

問われた声は少し掠れていて、まだ眠そうで。
俺は何にも言えずに首を振れば、三蔵は俺の背中に回した腕に少し力を入れた。

「さんぞ…?」
「寝ろ。明日は早い」
「うん…」

頷く俺の額に接吻て、三蔵は寝入ってしまった。

また、伏せた睫毛が頬に青い影を作る。

愛して貰っている時、苦しくて、気持ちよくて、涙に濡れた瞳を見開けば、少し辛そうに、でも気持ちよさそうに睫毛を伏せた三蔵の姿が見えた。
伏せた睫毛が細かく震えて、何だか俺が三蔵を抱いているような錯覚まで起こすほど、その時の三蔵は綺麗で。
そんな錯覚もすぐに、三蔵がくれる大きな快楽の波に攫われて、訳が分からなくなるのだけれど。

思い出してしまえば、身体が震えて、熱が蘇る。
俺はそれを払うように月光に照らされ、青い影を落とす三蔵の寝顔を見つめた。

見つめているとどうしても三蔵の伏せた睫毛に触れたくなって、そっと手を伸ばせば、その手は眠っているはずの三蔵の手に絡め取られ、柔らかな吐息で包まれた。

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