首 筋
日頃は黒いアンダーシャツに隠れている三蔵の首。
法衣をはだけて、上半身を脱いでも、白い肩先が見えるだけで、首は見えない。

見える時は、お風呂に入ってる時とか、私服を着ている時とか。
あとは、身体を重ねた時。

たくさん抱き合ったあとで、身体を寄せ合えば、目の前に綺麗な白い三蔵の首筋。
もし、俺が吸血鬼なら迷わず食らい付いてしまう。
薄く血管の透けた雪のような肌。

「三蔵って…美味そう」

抱き込まれた三蔵の腕の中から片手を出して、目の前の首筋に触れる。

「ああ?」

三蔵が眉間に軽く皺を寄せて俺を見下ろしてきた。

「だってさ、三蔵の首見てたらさ、そう思ったんだもん」

くすくすと込み上げてくる笑いをのせて応えれば、三蔵が小さく息を吐いた。

「何?」
「お前の首筋の方が甘そうだ」

そう言うなり、俺の首筋に唇を寄せて、強く吸い上げた。



そこって、服の襟で隠れないんだけど?
知ってて、痕付けた?



ちょっとむくれて見上げれば、三蔵の紫暗は楽しそうに綻んでいた。

「そんなことない。三蔵の方がぜってぇ美味い」

言うなり、俺は身体と首を伸ばして、目の前の三蔵の首筋に噛みついた。

「…っ」

一瞬、三蔵の身体が強張って、すぐに引きはがされた。

「ッの、サル」
「へへ…俺の印」

引きはがされた格好のまま、三蔵の首筋を見れば、俺の歯形と一緒に紅い華が一つ咲いていた。
三蔵が俺の身体に咲かせる紅い華よりちょっと薄いし、小さいけど、ちゃんと咲いた。
三蔵の真っ白な首筋に赤い痕。
それはまるで雪の中に咲く紅い華のようで、目が離せなかった。

「…バァカ」

そっと、その紅い華を指先で触れたら、その手を三蔵に握り込まれた。

「さんぞ…?」

問えば、三蔵は俺の耳元に唇を寄せて、言葉をくれた。



うん、三蔵は俺のものだよ。



翌朝、いつものアンダーシャツで隠れた首筋から、紅い華の欠片が見えていた。

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