腰
「う…怠い…痛い…」

もそもそと寝台に埋もれた格好で傍らに座る三蔵に、悟空は恨めしげな表情で訴えていた。
だが、三蔵はくしゃりと、悟空の頭を撫でて笑うだけで、何も言わない。

「…か、加減してくれてもいいじゃん…か」

拗ねた口調で三蔵を睨めば、三蔵は片眉を上げただけで。

「八戒達に何て言い訳するんだよ…」

両手で余るくらい久しぶりの宿屋で、身体を重ねるのはもっと久しぶりで、抑制がお互いに効かなかった。
貪るように求め合って、泥のような眠りに落ちて、目が覚めて、また身体を重ねた。
三蔵だけの所為ではないが、受ける方が負担が大きいことをこの恋人は知っているのだろうか。
お陰で、目が覚めれば身体の節々は痛い上に、受け容れた腰が鈍痛を放ち、身体は酷く怠くて、起き上がることさえ出来ないのだ。
こんな状態では、満足に歩くことも、ましてやジープに乗れるわけがない。
どう逆立ちしても、今日の出発は延期だ。

「別に…」

悟空の言葉に三蔵はどうでも良いような返事を返すと、また、悟空の上に覆い被さった。

「…も、もう無理、ぜってぇ無理」

三蔵の意図を察して、悟空が慌てて両腕を突っぱる。

「そうか?」
「そ、そうだって!」

必死の形相で悟空は頷いた。
これ以上交われば、明日の出発も怪しくなる。
それだけは許して欲しかった。
と言うより、八戒達への言い訳を思いつかないのだ。
三蔵と悟空の関係は、八戒と悟浄の知る所ではあったが、こんな理由でもう一日、もう二日など、逆立ちしても言えない。
言いたくもないのだ。

それなのに─────

突っ張る悟空の手を余所に、三蔵の手はいつの間にか掛布の下に潜り込み、悟空の腰を撫で上げる。
散々交わった身体はまだ、身体の奥に熱がくすぶっていて、容易く火が付きそうになる。

「…や、やめっ…ンッ…」

三蔵の触れる腰の辺りから、背筋を這い上がってくる熱。
その熱に思わず、悟空の身体がひくりと、震えた。

「身体はそうは言ってないぞ?」
「な、なに…言って…ぁうっ…」

さわりと、下腹部を撫でた三蔵の手に、悟空の喉が鳴る。

「腰を壊さないようにしてやるよ」

震えだした腕で三蔵の身体を尚も突っぱねる悟空に三蔵は楽しそうな口調で告げて、ゆるく反応を示し始めた悟空の自身を撫撫で上げた。

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