くるぶし |
くるぶしが擦れて、赤くなって、すりむいてしまった。 靴下をはけって、三蔵は煩いけれど、生まれてこの方、履いたことなんか一回もない。 多分、きっと。 旅に出る前は、靴下を履けなんて、言わなかったくせに、最近は色々煩い。 「…ってぇ」 八戒に貰った消毒薬で消毒していたら三蔵に見つかった。 「何してる?」 切れた煙草を買ってきた三蔵が、俺を見て顔を顰めた。 「え…あ、消毒」 ため息を吐きながら側に来ると、手に持っていた消毒薬と脱脂綿を取り上げた。 三蔵は自分が怪我をすることには全くと言っていいほど無頓着だ。 消毒する三蔵の眉間に皺が寄ってる。 「…だから、靴下を履けと言っただろうが」 呆れた声音で言われて、俺は頷くしかなかった。 「…うん…でも、履いたこと無いじゃん」 俺の顔を見た三蔵の口元が、微かに綻んでいた。 「なあ…何で最近、靴下を履けって言うのさ」 消毒を終えた三蔵は、俺の足首を膝にのせたまま、いや、さわさわと足首から脹ら脛を撫でていた手を止めた。 「今までそんなこと言わなかったじゃんか」 手が止まったことに小さく息を吐いて、俺は改めて三蔵の顔を見た。 「…そんなこと」 そう言うなり、足首を思いっきり引っ張られ、俺はバランスを崩して寝台に転がった。 「決まっているだろう?」 ついっと、唇を撫でられ、俺は顔に血が上るのがわかった。 「…な、に…言って…」 唇を撫でる三蔵の手を掴んで止めれば、何処か面白そうな色を浮かべた紫暗に、困ったような顔の俺が映っている。 「言わせたいんだろう?」 やんわりと手を取られ、しっとりとした三蔵の唇が俺のそれに重ねられた。 |