花の蜜 |
「三蔵!」 けたたましい足音と上気した顔で悟空が執務室に飛び込んできた。
「なあ、三蔵知ってるか?」 そんなことを言ってきた。 「何を…?」 思わず口を吐いて出た三蔵の言葉に、悟空はびっくりしたような表情で三蔵を見返し、 「ツツジの花って蜜が俺でも吸えるんだって」 そう言って、満面の笑顔を浮かべた。 「今日、ツツジの花たちが教えてくれたんだ。ちょっと可哀想だったけど、花だけを摘んで、がくの方を舐めたらさ、すっげえ甘かった。ほら、笙玄がくれる蜂蜜とは全然違う味なんだけど、甘いんだ」 そう一気に話すと、うっとりと瞳を眇める。
「なあ、三蔵はしたことある?」 悟空の様子に何となく及び腰になった三蔵の答えに、 「花の蜜、吸ったことないのか?」 焦れたようにもう一度訊く悟空の剣幕に三蔵は思わず頷く。
「じゃあ、今度一緒にしような。ツツジの花が咲いてる内に、必ずなやろうな、な、なっ!」 そう言って、悟空は三蔵の顔をまた、覗き込む。
end |
close |