甘ク、熱ク…




西に向かう途中。
このところずっと野宿続きだったのが、ようやくまともな宿に泊まれることになった。

二人部屋がふたつ。

法衣の袂を握り締めると、三蔵は軽くため息をついて、同室になることに同意してくれた。
嬉しくて、はしゃぐように部屋に向かう。
部屋にはいって荷物をおろし、身軽になったところで、そっと後ろから抱きしめられた。

「三蔵……」

包まれる体温を心地よく感じながらも、少しためらうように声をかける。

「八戒が、買出しに行くって言ってた」
「そうだな」

低い囁き声が耳元でする。

「だから、手伝わなきゃ」
「あぁ」

そういう答えが返ってくるが、抱きしめられた手が離れていくことはない。
それどころか、ふっと首筋に暖かな息がかかった。

ぞくりと、体に震えが走る。

「さん……ぞぉ……」

呼ぶ声が少しうわずる。

期待するかのように響く声に、三蔵がふっと笑みを漏らしたのがわかった。
顔が、なすりつけられるように首筋に押し当てられる。

柔らかな感触に息をつめる。
首筋から背中へと、甘い痺れが駆け抜けていく。

「悟空……」

低く囁かれる名前に、耳をくすぐられて、思わず体をすくめる。
三蔵が、もう一度笑みを漏らしたのがわかった。

だって、そんな風に呼ばれたら、しょーがないじゃないか。
そう抗議しようして、耳の下に降りてきた唇に言葉を奪われる。

くちゅり、と。
わざと音をたてるようにして、強く吸われる。

淫らに響く音と、濡れた感触と、甘い痛みと。

「ん……」

鼻にかかったような、吐息が思わず漏れる。

唇は、ゆっくりと、首筋を辿るように、耳の後ろから下へ下へとおりていく。
時折止まっては、甘い痛みを残す唇に、漏れる吐息を抑えられない。
熱のかたまりを吐き出しているよう。
熱く、熱い感覚に、頭の芯から溶かされていく。



歪む視界に目を閉じて。
もう一度、熱く、甘いため息をついて。

そして。



その腕に身を任せた。




end




<宝厨まりえ様 作>

「水桜月亭」様の5万Hit記念のアンケートに答えさせて頂いたお礼に頂いたお話です。
ずうっと、こっそり伺っていたのですが、勇気がもてずにうろうろしていました。
が、アンケートぐらいなら…と書き込んだのが、とても幸運な出逢いとなりました。
勇気って大事ですね。
久しぶりの宿、久しぶりの二人部屋で、
溜まった熱をゆっくりと解き放つようにまとわりつく三蔵の唇と悟空の熱い吐息がとても淫らに見えて、
でも、綺麗で…。
先の行為はきっと甘く、熱く解けていくんでしょう。
甘くて、我慢してきた恋人達の熱い一時を垣間見た気がしました。
まりえ様、ありがとうございました。

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