紅い痕
目を覚ますと、最悪の状態だった。 ……なんで、俺、床で寝てるんだろ。 ぼんやりと思うが、今はそんな疑問よりもこの頭痛と、それから喉の渇きだ。 「目ぇ覚めたか」 上から声が降ってきた。 「……さん……ぞ……」 声が喉にひっかかってうまく出ない。 「水か?」 聞かれた問いに、悟空はうなずく。 ――凄い、綺麗。 綺麗というか、艶っぽいというか。 紅い痕? 所有の証といわれる、それ。 ――俺は三蔵のモノだけど、三蔵だって俺のモノだもん。 そう主張しても、鼻で笑われるだけ。 「ほら」 ぐるぐると思考がまわっていたところ、目の前にペットボトルが差し出された。 「さんぞーのうわきもんっ!」 きっと睨みつけ、大声をあげる。 「俺を捨てようとしたって駄目だからなっ。ぜぇったい離れてやんないんだからっ!」 三蔵の眉間に皺が寄る。 「だいたい俺を三蔵じゃなきゃダメにしておいて、いまさらじゃないかっ。捨てるようなことしたら、三蔵がしたこと全部ぶちまけてやるっ!」 その先が続けられなくて絶句する。 「あでっ!」 ゴン、と頭に衝撃を受け、悟空は頭を抱えた。ひんやりとした感触が伝わってくる。 「なんで俺が蹴り落とす。お前が勝手に落ちたんだろうが」 確かに悟空は寝相が良くない。たまに、寝た時と頭の位置が逆になっているときとかもある。 「落ちても戻してやってるし、腕のなかにいるときは不思議と寝相がいいんだよ、お前は」 へぇ、そうなんだと他人事のように思った悟空は、そこでハタと気づいた。 「でも、昨日はそうしてくれなかったんだろ。それは俺に飽きたってことだろ。それに、それにっ! 三蔵の足っ! 太腿のとこに――っ!」 ゴィン! 「お前、今後いっさい、一滴も、酒は飲むな」 仁王立ちになった三蔵から、壮絶な怒りがこもった低い声が発せられる。 「酒……? え……?」 思いもつかなかったことをいわれ、頭を抱えながらも悟空は目を丸くした。 「あの痕、俺?」 ゲィン! と三度、衝撃が落ちる。 「そんなにぼこぼこ何度も殴んなよっ! せっかく思い出せそうだったのに」 どうやら昨日のことは三蔵にとって余程嫌なことだったらしく、苦虫を噛みつぶしたような表情を見せている。 「今朝は粥でも作るよういってくるから、お前は寝てろ」 ようやく普通にペットボトルを渡し、三蔵はまた寝室から出ていく。 「たたた……」 二日酔いなのか、先ほど殴られたからなのか。 ところで。
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<宝厨まりえ様 作>
「水桜月亭」の宝厨まりえ様に頂きました。
私のオフ本「Gaze fourth」で書いた鬱血痕をバスローブの下に付けた江流のお話をお読みになって、書いて下さったお話です。
しかし、何という縁でしょう!
よくぞ書いた、偉いぞと、自分を褒めたい気持ちで一杯です。
こういう素敵な輪が広がるっていいですね。
書き手冥利に尽きるというモノです。
二日酔いで床の上で目覚めた悟空と平静を装った感じの三蔵。
酔いに任せてごてた悟空をいなしきれず、痕を付けさせてしまった三蔵が可愛いですよね。
照れも入って、怒りも入って、何だか見ているこっちが恥ずかしさに居たたまれない感じがしたり。
いつもの二人の朝なのに甘いお話です。
というか、三蔵の色香って罪作りですよね。
傾国の美女もかくやという…あ、でも三蔵は攻めですからね。
それでも艶っぽいのが、素敵なのですからね。
まりえ様、本当にありがとうございました!
で、このお話で見た三蔵の白い肌に付いた紅い痕からまた、私が萌えて書かせて頂いたお話は
こちら にあります。