クレヨン
画用紙がたくさん詰まった本、スケッチブックと一緒に、いろんな色の入ったクレヨンを三蔵が買ってくれた。

チョコレートの茶色。
りんごの赤。
桃の花の色の桃色。
ミカンの橙色。
薄いオレンジ色は、肌色。

三蔵の髪の色の黄色。

春の葉っぱ色の黄緑。
真夏の緑色。
水の色だから水色。
空の色の青。

三蔵のよく着てるシャツの色の黒。
雲の色、三蔵の法衣の色の白。



十二色のクレヨン。



でも、三蔵のあの綺麗な瞳と同じ紫色がない。
だから、三蔵の顔が描けない。
嬉しいけれど、ちょっと悲しいって思ってたら、今日、街へ出た三蔵がお土産をくれた。



小さな白い袋。



開けたら、紫のクレヨンが入ってた。
びっくりした顔の俺に、

「欲しかったら、最初に言え」

と、頭をこづかれた。

「…うん。ありがと」

そう言ったら、三蔵は何も言わないで着替えに寝室に入って行った。

三蔵の紫と黄色。

一色増えて、俺のクレヨンは十三色になった。

close