ニューロン
────三蔵のカタチ。

それは金色の綺麗な髪と夜明け前の色を映した紫暗の瞳。
白い肌、ちょっと厚めの形の良い唇と額にある深紅の宝石。
綺麗で長い指と煙草の匂い。
白い法衣と金色の袈裟。
肩に掛けられた大事な経文。

それと・・・・・

拳銃。
口が悪いのと不機嫌な顔。

後は・・・・うんと・・・

誰も知らないスケベな顔。
でも何より、優しくって暖かい。




執務室の窓辺に置いてあるソファに膝を抱えたままころんと転がった悟空は、山のような書類に囲まれて仕事をしている三蔵を見つめていた。




そうだ、すぐ怒るんだよな。
短気なのも三蔵のカタチだ。

それから・・・何でも知ってるし、字がすっげえ上手い。
仕事も速いけど、面倒くさがりで、無精。

好き嫌いが多くて、ラーメンにマヨネーズ入れる。
そんで湿ったせんべいが好きで、あんこが好き。




イライラと煙草をくわえては、書類に目を通し、サインをして捺印をする。
まるで機械のように、正確にこなして行く。
山積みの書類が右から三蔵の前を通って左に積まれて行く。
さらさらと筆を走らせる音以外は、開け放った窓から聞こえる風のざわめきと木々の囁き。

悟空は身体を伸ばしてうつぶせになり、顔だけを三蔵に向ける。




三蔵のカタチであとは・・・あ、声。

普通に話す時は、ちょっと低い。
経を読んでる声は、一切の迷いや汚れを打ち払う声。
怒ると地の底を這って、殺気立ってくる。

雨が降ってる時の声は、儚くて嫌い。

そんでスケベなことを考えてる時や変なこと考えてる時は、楽しそうな声。
でも、何より俺の名前を呼んでくれる時の声が一番好き。

誰より、何より三蔵が一番好き。




三蔵が悟空の視線が外れたことに顔を上げた時、悟空は静かな寝息を立てていた。
その寝顔を見つめて、



俺をカタチ造るもんに、お前も入れとけ、サル…



小さく喉を鳴らして笑うと、三蔵はまた仕事を再開した。




悟空の口から零れた三蔵のカタチ。

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