√ (from Keep your vow) |
白い病院のベットで悟空は、数学の問題集と格闘していた。 退院したら高校へ通うのだ。
通えない間の先生は、三蔵。
口は悪いわ、すぐに殴るわ、病人相手でも手加減無しの鬼の家庭教師。 規則正しいリズムを刻む心臓の鼓動が、嬉しい。
悟空の知らないことがたくさん待っている。
が、その前に遅れがちな学力を、普通の高校生並みに引き揚げねばならない。 「…えっと、この√がこうなるから…χは、えっと…うんと…う゛ーっ」 頭を捻るが、どうしても分からない。 数字と√と文字式に公式の海に溺れてしまいそうだ。 「さんぞ、わかんねぇって…」 傍らの三蔵を振り返れば、夜勤明けで疲れているのか、備え付けのパイプ椅子に座ったまま眠っていた。 「…疲れてるんだ。ごめんな」 激務の医者の仕事と悟空の相手。 自分は三蔵の負担になることばかりだ。 「大好きだよ、さんぞ。ありがと」 小さく呟いて、悟空は幸せそうに笑った。 窓からはいる光は晩春の色を運んでくる。 |