階 段 |
何処までも続く階段。 長くて遠い行く先。 大きな門を潜って、前を歩く三蔵の後ろを付いて行く。 立ち止まって朧に霞んだ周囲を見回していたら、三蔵の声が上から聞こえた。
大丈夫、不安なんか何にもないよ。
でも・・・
三蔵の法衣の袂をそっと掴めば、歩き出した三蔵が振り返った。 「いいから掴んでろ」 そう言ってくれた。 「…うん」 俺は小さく返事をして、もう一度法衣の袂を掴み直す。
何処まで続くんだろう。 足下の階段は綺麗な灰色の石を積んだもの。 何も音のしない空間に、三蔵と俺の足音が静かに響く。 登る先には、三仏神という神様が居るって、三蔵は言っていた。 「俺が拾ってきたから、興味があるんだろ」 と、呆れたような顔をしていた。
登る階段。
何も言わずに歩いていた三蔵の足が止まって、俺を振り返った。 「おい、もう着くから横に来い」 そう言って、俺の手を袂から離す。 周囲を覆っていた霧が吹き払われたような錯覚を起こすほど、辿り着いたそこは色鮮やかだった。 「…ふぇ…」 ぽかんと見上げていると、三蔵が掴んでいた腕を離した。 「行くぞ」 と、静かに先へ行くことを促す。 「ちゃんと付いて来いよ」 そう言って、一歩を踏み出した。 目の前の朱塗りの門が、音もなく開いて行く。
遠い記憶の彼方の人々との知らずの再会。 |