年中無休 |
「えーっ、今日は一緒にいてくれるって言ったじゃんかぁ」 「仕方ねぇだろうが、仕事なんだから」 その言い訳は、まるで日曜日に接待ゴルフに出掛ける夫のようで。 「約束したじゃんか」 一通りの用意をすませた三蔵が振り返れば、潤んだ金眼からぽろりと、透明な雫が零れた。 「…ったく、泣いたってダメなんだよ、サル」 がしがしと金糸を掻きながら、三蔵はため息を吐いた。 「サルってゆー…なっ…」 ぽろぽろと涙を零しながら、三蔵を睨む。 悟空とて分かっているのだ。 それなのに・・・・・。 三蔵は急に入った三仏神からの下命に、片道二日もかかる街へと出掛けてしまうのだ。 分かっているのだ。
泣きながら自分を上目遣いに睨む悟空の金眼に、三蔵は負けそうになる。 悟空の泣き顔は、三蔵の決心を簡単に解いてしまう。 だが、今回は絶対に拒否できない三仏神からの下命。 三蔵はふわりと悟空を抱きしめると、 「…帰ったら一緒に居てやるよ」 そう悟空の耳元で呟き、金鈷に口付けを落とした。 「…約束、だかんな」 離れようとする三蔵の頬に悟空は口付けると、三蔵の腕からすり抜けて寝室に駆け込んでしまった。 「三蔵…様?」 立ちつくす三蔵に笙玄は、どうしたのかと怪訝な声音を向ける。 と、寝所の扉が開かれ、三蔵が首だけを出して、 「帰ったら休暇だからな」 そう告げた。 「はい」 三蔵の滅多に見ない子供じみた態度に笙玄は、笑顔で頷くのだった。
年中無休の三蔵の仕事。 それは、数えるほどの三蔵の休暇。 年中無休の三蔵の仕事。 |