コインロッカー (parallel) |
コインロッカーの立ち並ぶ駅の構内。 そこに濃紺の学生服の悟空が、小さな封筒を握ってキョロキョロしていた。 そして、目的の場所を見つけたのか、悟空の顔が一瞬、輝く。 悟空は目的のコインロッカーの前に立つと、握っていた封筒から鍵を取り出した。 「……逢えますように…」 小さく祈るように呟いて、悟空は鍵を開けた。 小さく軋んでロッカーの扉が開けば、中には赤いリボンのかかった箱とクリーム色の封筒が入っていた。 「よ、かった…」 よほど緊張していたのか、今にもその場に座り込みそうになるのをかろうじて堪える。 「…さんぞ」 短い手紙の最後に綴られた名前に、指を這わせて悟空はその名前を呟いた。 三蔵と出会ったのはもう一年も前になる。 たまたま座った席の隣が三蔵だった。 何度も巡り会う偶然。 三蔵は世界中を飛び回る仕事をしているらしい。 三蔵の素性も関係ない。 そう告げた時、三蔵は見たこともない優しい笑顔をくれた。 三蔵が日本に戻ってくる僅かな間の逢瀬。 今年の悟空の誕生日、どうしても仕事の都合で逢えないと悔しがっていた。 そして───誕生日の日、届いた小さな封筒。 開封すればいつものコインロッカーの鍵が入っていた。 学校の帰り、友達の誘いも断って一目散に目指した。 逸る気持ちと共にその身に生まれる緊張。 目的のコインロッカーの前に立った時には、何故か心臓が口から出そうなほど緊張してしまっていた。 本当に…想いを告げた日のように。 悟空は手紙をたたんで封筒にしまい、箱に手を伸ばした。 「三蔵……ありがとう…」
───離さず、いつも傍に お前の傍らに在ることを願って 誕生日おめでとう 三蔵 |