プラスチック爆弾 (from 愛をください) |
僕、思うんですよ。 何で、あの二人はいつまで経ってもよそよそしいんだろうって。
ねえ、悟浄、聞いてます?
昨日、悟空の体調が思わしくないって、三蔵の所の執事さんに連絡をもらったんです。 「悟空の様子は?」 って訊いたら、熱が昨日の夜から出て、今朝は吐いたって、それは心配そうに三蔵が答えるんです。 悟空の部屋へ行ってみれば、悟空は悟空で相変わらず細い身体を無理にベットに起こして、僕を迎えて笑ってくれたんです。 もう、なんて健気で可愛いんでしょう。 「大丈夫ですか?」 って傍に寄ったら、悟空は大丈夫だと、苦しそうな呼吸と青い顔色で頷くんですよ。 「さんぞ、俺、大丈夫だから、仕事して…」 と言うんです。 「後は、頼む」 何て、仕事に行っちゃうんですよ。 僕が呆れたような、怒った顔で三蔵の背中を見ていたのに気が付いた悟空が、僕のジャケットを引っ張ったんです。 「…八戒、あの…怒らないで。三蔵、今、仕事が忙しいんだって。だから…あの…」 心配そうな悟空に頷いてあげると、ほっと安心したのか、悟空はベットに倒れ込んでしまいました。 「これで熱が下がりますから、気分も楽になりますよ」 そう言って笑顔を浮かべる悟空に、 「我慢なんてしないで、もっと三蔵に我が侭言って、甘えていいんですよ」 って、僕、言っちゃったんです。 「…ここに住まわせてくれるだけで、幸せだから…俺、それだけで嬉しいから……ありがと、八戒。心配かけてごめんなさい…」 泣きそうな声が聞こえました。 「ごめんなさい、悟空…」 謝る僕の声に悟空は緩く首を振って、もう一度「ありがとう」と言って、眠ってしまいました。
あんな三蔵、初めて見ました。
眠る悟空の髪をゆっくりと撫でながら、小さく歌を歌ってるんです。 これほどにお互いのことを思っているくせに、一歩が踏み出せない二人に、イライラします。 ねえ、悟浄、こう悟空と三蔵の想いに卵ぐらいの大きさのプラスチック爆弾を貼り付けて、そこから僕の手元に導火線をひっぱってくるんです。 やってみましょうか? リスクがあってこその楽しみですって。 でもね、本当にあの二人には、幸せになって欲しいんですよ。 |
リクエスト:「愛をください」の三蔵と悟空の進展しない二人の様子を八戒視点のお話で |
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ありがとうございます。 謹んで、みつまめ様に捧げます。 |
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