釦
一晩中、甘い身体を味わった。
何度身体を重ねても、華奢で幼さの残る少年は、行為に慣れなくて。
恥ずかしさに染まる頬の赤さも、強要する行為に抵抗をするその仕草も、与えられる快感に耐える媚態も、耐えきれずに啼くその甘やかな声も、全てが熱を煽る。

三蔵は疲れ切って眠る悟空のまろい頬に指を這わせ、薄く笑って起き上がった。
三蔵が身体を起こした所為で開いた肌の隙間を埋めるように悟空は身じろぐ。

「ん…さ…ぞ…」

昨夜、自分の身体を苛んだ三蔵の名を小さな声で呼んで、悟空は愛された証の華を咲かせた身体を三蔵が遺した温もりに寄り添うように丸まって、また、規則正しい吐息を零した。
寝台から下りた三蔵は、床に脱ぎ散らかした中から自分のシャツを素肌に羽織ると、使っていない悟空の寝台に座って、煙草に火を付けた。

緩やかに立ち上る紫煙。

昇ったばかりの柔らかな朝日に、稚い顔で眠る悟空の大地色の髪が光を弾く。
日向の明るさと輝きを宿した金色の瞳は、薄い瞼に隠されて今は見えない。
その瞳も三蔵が熱を与えれば、瞬く間に艶やかに濡れて、三蔵を底なしの快楽に誘う。
薄く開いた桜唇から紡がれる声は、舌足らずで、幼さを感じさせるというのに、啼かせるほど艶を含んで、吐息さえ惜しくなるほどの甘露となる。
寝返りをしてはだけた項、掛布から垣間見える華奢な身体は、日頃は生命力に溢れ、大地を駆け回る。
が、それも三蔵が触れるほどにしっとりと濡れ、仄かに色付き、妖華のごとく三蔵に纏い、快楽に震える。

「…お前は本当に……」

三蔵は悟空の寝顔にまた、起き上がる自分の熱に、苦笑を漏らした。

本当にどうかしていると、自分でも思うのだ。

だが、悟空の姿を目の前に、甘やかに薫るその香に、身体に巣くう獣が頭をもたげるのだ。
身体を重ねるようになって、ずいぶんと立つというのにだ。

三蔵は短くなった煙草を灰皿に押し付けて消すと、悟空の横に腰を下ろした。
素肌に羽織ったシャツの隙間から、三蔵の分身がゆるく意志を示し始めているのが見える。

「押さえが、きかねぇ…」

困ったような、それでいて楽しそうに三蔵はそう呟くと、薄く開いた悟空の口唇を塞ぎ、悟空の体内にくすぶる熱を呼び覚ますように口腔を犯した。

「……ん…ぁ…ぅん」

息苦しいと無意識に伸ばされた悟空の指が、三蔵のシャツの取れかけていたのだろう釦を引っかけた。
軽く、乾いた音を立てて釦が床に飛び、転がる。
それを合図のように、三蔵はまだ形を変えていない悟空の半身へその手を伸ばしたのだった。

close