眠 る |
オレンジ色の常夜灯に浮かぶ寝顔。 金色の髪が柔らかな色に輝いて、伏せた瞼と影を落とす睫毛。 中心には深紅の宝石。 神様に一番近いところにいるという証。 不機嫌に結ばれた唇も今は穏やかな曲線を描く。 初めて見た時、本当に太陽が姿を結んだのかと思った。 嬉しかった。 山を下りて、初めての夜、信じられなくて、現実味が無くて。 傍で眠る三蔵の寝顔を見たり、窓の外を見たりしながら一晩過ごした。 それでもやっぱり、何処か信じられなくて、心はすぐに凍てついた。 そんな俺をちゃんと現実に引き戻して、外に居ることを根気よく教えてくれた。 三蔵は本当に、我慢強く、根気よく。 色々思い出すとおかしい。 よかったぁ… ほっと、ため息を吐いた途端、声を掛けられた。 「こんな夜中まで起きて、何、笑ってやがる」 一瞬、息が止まった。 「あ、いや…な、なんでも…えっと…寝られない…って、あ…目が覚めたって…その……アレ?」 わたわたと言い訳か何だかわからないことを言っていたら、訳が分からなくなって。 「バカ猿…」 妙な返事をしたら、益々三蔵は頭を抱えて。 「いいから来い」 そう言って、上掛けをめくってくれた。 「さ、さんぞ?」 滅多にしてくれないお誘いに俺はすぐに動けなくて固まってると、気の短い三蔵が睨んできた。 「嫌なら来るな」 慌てて自分の寝台から飛び降りて三蔵の横へ潜り込んだ。 「寝ろ、明日も早い」 とくとくと三蔵の鼓動を聞きながら、目を閉じた。
眠るのが不安だったのはもう思い出せない程の昔。 |