眼 鏡 |
縁なしの三蔵の眼鏡。 新聞を読む時にだけかける眼鏡。 目が悪いのか、そうでないのか、訊いたことはないけれど、視力が悪いとは思えない。 遠くの標的も、近くの標的もちゃんと当てるし、大きな的も、小さな的もきっちり当てる。 新聞上にぽんと置かれた眼鏡を見つめながらそう言ったら、悟浄が、 「あれは遠視だろ」 って、言った。 「遠視?」 わかんなくて聞き返せば、八戒がココアの入ったカップを差し出してくれながら説明してくれた。 「遠くはよく見えて、近くが見にくいことですよ」 そう八戒が言ったら、悟浄がぶって吹き出した。 「何?」 わかんなくてびっくりしていたら、八戒も解ったのか笑い出してしまった。 「それって老眼…」 言って、また笑い出す。 「老眼?老眼って?」 八戒の説明を悟浄が簡単にまとめて・・・・・。
煙草を買いに行っていた三蔵が戻ってきた時、 「三蔵って老眼なの?」 って、訊いたらたくさん宿屋の壁に穴が開いて、悟浄が逃げ出して、八戒も買い物へって出て行っちゃった。 「痛いじゃんかぁ…」 あまりの痛さに涙目で睨めば、三蔵は嫌そうに鼻をならして教えてくれた。 「老眼じゃねえし、遠視でもねえ。目が疲れやすいからかけてるだけだ」 って。 眼鏡をかける三蔵も、かけてない三蔵もどっちも綺麗だし、大好きだから俺にとって理由は本当はどうでも良いんだって、言ったらきっとまた、なぐられるんだろうな。 |