シャツ
たくさん身体を重ねて、疲れ切って眠った次の日、陽の光に誘われるように悟空は目が覚めた。
寝台に身体を起こせば、昨夜、散々身体を高ぶらせ、苛んで、愛した人の姿は既に無くて。

「…さん、ぞ…」

名前を呼んでも応えはなくて。
寝台の上には脱ぎ捨てられたシャツがひとつ。

体中に咲いた紅い花と気怠さを引きずって、寝台から下りる。
脱ぎ捨てられたシャツを素肌に羽織って、悟空は寝室の扉を開けた。

「やっと、起きたか…」

窓際の長椅子に座って新聞を読んでいた三蔵が、その気配に顔を上げ、眩しそうに瞳を眇めた。
悟空はその声に小さく頷き、ふらふらと三蔵の元へ近づいた。

「…はよ、さんぞ」

ほんわりと笑えば、三蔵は返事の代わりに小さなため息を零した。

「な、に?」

問えば、

「…お前は…誘っているのか?」

と、腕を引っ張られた。

「そんなこ……んっ」

否定の言葉は三蔵の唇に取られ、代わりに熱を煽るような口付けが与えられた。

「…ぅん…ふっ…んん…」

昨夜の熱が呼び覚まされ、悟空の身体はすぐに熱を帯びる。

「…さ、んぞ…」

唇に触れたまま名前を呼べば、身体を抱き込む腕が、羽織ったシャツの隙間から身体を撫でた。

「…ぁん…やぁ…ま、まってよぉ…」

脇腹を撫で上げ、胸の飾りを指先で捏ねられ、悟空は熱い吐息を零しながら、その手を止めようとする。
だが、それは耳朶に直接届けられた声音で阻まれた。

「誘ったお前が悪い」
「そ…んぁ…誘ってなん…ぁやぁ…」
「下着も付けずにか?」
「…だ、だって…ぁん」

反論は下肢を撫で上げ、柔らかく握り込まれた圧迫で止められ、駈け上がる快感に悟空の身体が撓った。

「誘った責任は取れよ、悟空」
「ぁあ…ぅん…さんぞ…バカぁ…んぁあ…」
「上等だ」

行為の始まりを告げるように、羽織っただけのシャツが微かな音を立てて床に落ちた。

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