不機嫌
眉間の皺。
顰められた眉。
硬く引き結ばれた唇。
きりきりと棘刺す雰囲気。

執務室での三蔵の様子。

別に仕事が嫌でそんな顔をしている訳じゃないんだって、三蔵はそう言っていた。
じゃあ、仕事が難しいのかと思ったら、違うって。

何で?

訊いたら、下らない仕事まで持ってくるから、だって。

下らない仕事?

解らなくて首を傾げたら、誰にでも出来る仕事で、三蔵がしなければならない仕事じゃないこと、なんだそうだ。

笙玄が悪いの?

って、言ったら、

あいつは悪くない。

そう言った。

笙玄は一生懸命、三蔵が嫌がる仕事を持ってこないように頑張ってるんだって。
でも、何でも三蔵の判子が欲しい人が、笙玄の断りを押し切って、ごり押しで持ってくるんだって。
だから、仕事が増えても減らないんだって。

だから、不機嫌にな顔して仕事をしているんだって。



え、でも三蔵はいつでも不機嫌だって?



違うよ。
三蔵はいつも不機嫌なことはないんだ。

笑ったり、呆れたり、気が抜けた顔だってするんだ。
それに、スケベな顔だって。

三蔵はね、感情表現が苦手なんだって、笙玄が言ってた。
俺もそう思う。
本当に三蔵の心の中は豊で、優しくて、暖かいんだ。

機嫌の悪い時は勿論だけど、恥ずかしかったり、照れくさくても不機嫌な顔になるんだ。

あ、でも、これは内緒。
だって、三蔵は気付いてないから。
いい、気が付いても黙っていてね。



三蔵のことが本当に大好きって?



呆れるほどだって?



いいじゃん。
だって、三蔵は俺に世界をくれて、幸せをくれたんだから。

それに、三蔵の気持ちを知るほどに、三蔵が大好きになってくる。
もっと、もっと三蔵のこと大好きになるよ。
三蔵を好きになるのに限界はないんだ。

不機嫌な顔をして、気持ちを隠しても、底なしに優しい三蔵だから。

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