大きな手 |
三蔵がちゃんと留守番をしていた日、帰って来て俺の頭を撫でてくれた。 くしゃっと、撫でるっていうより掻き回すって感じだけど、ぽんぽんと撫でるんじゃなくて軽く叩く感じだったりするけど、それが凄く嬉しかった。 三蔵は人に触れられるのも、触れるのも嫌い。 三蔵は本当はすっごい照れ屋で、不器用なんだ。 三蔵って矛盾だらけ。 そんな三蔵だけど、ちゃんと俺のことを見ていてくれるし、約束もよっぽどのことがないかぎりは守ってくれる。 え、いつも不機嫌なのに? 違うよ、三蔵は表に感情を出すのが苦手なだけ。 だから、俺は、三蔵が何も言わずに頭を撫でてくれるのが好き。 落ち込んでる時も、嬉しい時も、悲しい時も、いつでも俺が言葉に出来ない気持ちを抱えてる時は、何も言わずにあの大きな手で撫でてくれる。 泣いていたらちょっと冷たい掌で気持ちを包んでくれる。 何も言わずに傍に居てくれる。 だから、俺も三蔵が弱ってる時、傍にいて三蔵が俺にしてくれるようにしてあげたい。 早く大きくなって、三蔵を包んであげられるくらいになりたい。 三蔵に頭を撫でてもらってにこにこ笑っていたら、三蔵が訝しげな顔で俺を見下ろしてきた。 「何?」 って、訊いたら、 「…バカ面」 って、金鈷を指で弾かれた。 「何で?」 って、手を掴んだら、 「ガキだから」 だって、笑った。 「ひでぇ…」 って、膨れたらまた、頭を撫でてくれた。 「ただいま」 耳元で言われた。 |