大きな手
三蔵がちゃんと留守番をしていた日、帰って来て俺の頭を撫でてくれた。
くしゃっと、撫でるっていうより掻き回すって感じだけど、ぽんぽんと撫でるんじゃなくて軽く叩く感じだったりするけど、それが凄く嬉しかった。

三蔵は人に触れられるのも、触れるのも嫌い。
だから、こうして三蔵から俺に触ってくれるのは本当に嬉しい。

三蔵は本当はすっごい照れ屋で、不器用なんだ。
その上、自分に向けられる好意に鈍感。
そのくせ、めちゃくちゃ優しいくせに、それを表に出すのがへたくそ。
苦手?
じゃなくて、そのことを三蔵が良いことだと自分で認めていない。
でも、人の気持ちには敏感。

三蔵って矛盾だらけ。

そんな三蔵だけど、ちゃんと俺のことを見ていてくれるし、約束もよっぽどのことがないかぎりは守ってくれる。
怒られることも多いけれど、褒めてくれることも多い。

え、いつも不機嫌なのに?

違うよ、三蔵は表に感情を出すのが苦手なだけ。
本当はその心は深くて、感情豊で、暖かいんだ。

だから、俺は、三蔵が何も言わずに頭を撫でてくれるのが好き。

落ち込んでる時も、嬉しい時も、悲しい時も、いつでも俺が言葉に出来ない気持ちを抱えてる時は、何も言わずにあの大きな手で撫でてくれる。

泣いていたらちょっと冷たい掌で気持ちを包んでくれる。
笑っていたら大きな掌で温かく包んでくれる。

何も言わずに傍に居てくれる。

だから、俺も三蔵が弱ってる時、傍にいて三蔵が俺にしてくれるようにしてあげたい。
でも、俺の手はまだまだ小さくて、三蔵を包んであげられない。

早く大きくなって、三蔵を包んであげられるくらいになりたい。

三蔵に頭を撫でてもらってにこにこ笑っていたら、三蔵が訝しげな顔で俺を見下ろしてきた。

「何?」

って、訊いたら、

「…バカ面」

って、金鈷を指で弾かれた。

「何で?」

って、手を掴んだら、

「ガキだから」

だって、笑った。

「ひでぇ…」

って、膨れたらまた、頭を撫でてくれた。
そして、

「ただいま」

耳元で言われた。

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