宝 物 |
ねえ、三蔵…ひとつ訊いてもいいですか? あなたの宝物って何なのですか? 「…ぁあ?」 そんなあからさまに不審な顔しなくてもいいじゃないですか。 「いる。…で?」 あ、ああ…何でそんなこと訊くんだっていうんでしょう?
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「なあ、なあ、八戒」 買い出しした荷物を整理していた八戒の背中に、飛びつくようにして悟空が声をかけた。 「あのさ、八戒の宝物って何?」 肩越しに振り返った八戒の顔を覗き込むようにして、悟空が期待を込めた表情で訊いてきた。 「僕の宝物、ですか?」 屈めた背中にぶら下がる悟空を離して、八戒は彼と向き合った。 「また、何故そんなことを?」 問えば、悟空は小首を傾げて答えた。 「さっき、庭の樹に登って空見てたらさ、木の下で子供が大事な宝物の話をしてたんだ。で、じゃあ俺の宝物は何かなあって、考えていたらさ、八戒達や三蔵の宝物が気になってさ」
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って、訊かれて咄嗟に何もなくて…思いつかないと、正直に答えたんです。 「…あのな…宝なんざ、人それぞれだろうが。本人にとっては宝物でも他人から見ればガラクタにしか見えねぇものが殆どだ。価値観の違いから生まれてくるそんな概念に何、振り回されてやがる」 でもね、気になるじゃないですか。 「……八戒…」 睨んでもだめですよ。 「………」 だって、きっと悟空の答えもあなたと同じだからですよ。 「八戒…」 ええ、きっと考えれば、僕の答えもあなたや悟浄と同じになると思います。 ねえ、当たってるでしょう? |