仕 草 |
例えばそれがお茶を飲む仕草だったり、ご飯を食べる姿だったり。 煙草を吸う、というその動作一つも、だ。 じっと立って、僧侶達が掃除をしているのを見ているその立ち姿でも、衣を翻して回廊を歩く姿でも、本当にそれは目を引く。 その容姿だけではない。 人にとってごくありふれた普段の行動や仕草が、目を引くのだ。 本人は当たり前のように行動しているだろうし、決して上品とも言い難い言葉遣いや表情を見せるというのに、それを忘れる程の印象を植え付けてくれる。 気付いたのは些細なことだった。 自分の同居人は、孤児院で育ったけれど、その仕草は優しく、美しい。 けれど、とある事件で知り合ったあいつは桁が違った。 ただの柄の悪い、坊主とも思えない言動に最初は気付きもしなかった。 しかし、それもあいつの側仕えの坊主の努力の賜だと信じていた。 「本当に三蔵はちょっとした仕草が美しいですよね」 感心したように帰り道、八戒が言うのへ、俺はただ頷きを返すことしか出来なかった。 「ショックでした?」 と、八戒が笑いを含んで訊いてくるから、 「ちーっと、驚いたんだよ。あんな生臭がなーんで、あんなに洗練されていんだぁって、さ」 ふてくされたように答えれば、 「悟空が言ってました。三蔵はご飯の食べ方やお箸の持ち方とかすっごい煩いって」 くすくす笑いながら八戒が返してきた。 「三蔵の七不思議ですね」 と言って、また笑った。 |