秘 密 |
三蔵が宿の中庭で煙草を吸っていた。 秋の盛りの今頃の色付いた木々を背景にして立つ姿は、とても綺麗だ。 男の人に「綺麗」って言うのは変だって、教えて貰ったけれど、やっぱり三蔵を表すのに「綺麗」って言葉は必要だ。 秋の日暮れ前の光に光る金色の髪、優しいけど冷たくて、厳しくて、とても澄んだ紫暗の瞳。 どこを取っても、どれを見ても、本当に三蔵は綺麗だ。 寺院に居る時は、笙玄がいつもイイ匂いのする香を焚きしめていたから、三蔵の法衣からはその香の薫りと煙草の臭い、あとは、墨のの臭いがいつもした。 大好きな三蔵。 あの暗い岩牢から連れ出してくれたあの日から、俺の世界の中心は三蔵になった。 誰よりも大好きで、大切で、綺麗な三蔵が居るからなんだ。 外見が綺麗なだけじゃない。 だから、三蔵は誰よりも強くて、何よりも綺麗なんだ。 そんなこと考えながら、何処かぼうっとした顔で煙草を吸ってる三蔵を見ていたら、不意に三蔵がこっちを向いた。 「何やってんだ?」 って、顔を覗き込んで来た。 「な、何もしてねぇ」 にやにや笑う悟浄の顔を押しのけて、慌てて立ち上がって尻を払いながら中庭を見れば、三蔵の姿は無かった。 |