唇
触れたところから熱が生まれていく。
掠めるように触れたり、啄むように触れたり、三蔵の唇は意地悪だ。
しっとりと、悟空を包み込むように触れてくる。
こんな時だけ、雄弁で、意地悪で甘い。

唇を重ね合わせる瞬間、微かに綻ぶとか。
悟空の耳朶に触れて何かを囁く時に仄かに熱を帯びてるとか。
吐息がくすぐったくて、甘いとか。
こんな時だけ、正直で、優しい。

いつもは気難しそうに引き結ばれていて、綻ぶことなんてないって姿なのに。
タバコをくわえて、時に歪む口元は冷たく見える。

なのに、こんな時は酷く熱くて、触れた場所が熱を持って焼け付くみたいだ。

「…ん…ゃあ…」

上がる声にほら、綻んで、嬉しそうで、翻弄される。

「…悟空」

紡ぎ出される悟空の名前まで、熱を孕んで耳に届く。
耳朶を甘噛む感触に、身体はどうしようもなく震えて。

「ぁ…あぁ…ん……」

こぼれる吐息を掬い取られて、白くなる。

触れたところから融け出してゆく。
噛むように触れたり、舐めるように触れたり、三蔵の唇は意地悪で。
真綿でくるむように、悟空に触れてその熱で溶かしてゆく。
こんな時だけ、甘くて、優しくて、怖い。

悟空だけが知る三蔵の本当。

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