出会い
あの日、岩牢から見る世界はいつもと同じだったはずなのに、何故か胸がどきどきした。
格子越しに見える空はいつになく青くて、高くて、とても綺麗だった。
風も何だか柔らかくて、優しかった。
太陽は眩しくて、でもとても温かかった。
本当にいつもと変わらないのに、どこかいつもと違っていた。

それは何かが変わる予感だったんだと、今になって思う。

そうして、出逢った三蔵は、太陽の光にキラキラしてて、眩しくて、とても綺麗だった。
差しのばされた手をとっていいのか、そんな迷いもなくその手を握った。

握った手は温かくて、柔らかった。

あの時、三蔵は、俺が何時も呼んでいる聲が、いい加減煩かったから一発殴りに来たんだって言っていた。
けれど、殴られることはなかった。
今でも、時々、煩い、呼ぶなって怒られるけど、俺は三蔵を呼んでない。

呼んでいないはず…。

確かに、岩牢で誰かを待って、呼んでいた気もするけれど、何にも覚えていない。
岩牢に入った時のことも、何故入ることになったのかも。
ただ、大事なものが失くなったっていうことと、大変なことをしたということを何となく理解してて、自分の名前だけは覚えていた。

三蔵もそんなことを言っていたから、きっとそうなんだろう。

でも、今は、三蔵と一緒にいる。
それが全て。

三蔵がくれた世界を知るのが一番。
こんなに広くて、大きくて、綺麗で、楽しいなんて。
嬉しくてドキドキする。

今日も気持ちいいくらい晴れて、綺麗だ。
だから、今朝、三蔵と約束したんだ。

「なあ、散歩に行こう?」
「ああ…」

珍しく簡単に頷いてくれたから、

「てめえのおやつが済んだら呼びに来い」

って、約束してくれたから。
そろそろ三蔵を散歩に誘いに行っても大丈夫かな?
そう思って、扉を開けたら三蔵がいた。

close