寝不足 |
「でっけぇあくびだな」 久しぶりに遊びに来た悟空が、何度もする大きなあくびに、悟浄は呆れた顔をする。 「寝不足ですか?」 昼食の箸を握ったまま、船を漕ぎ出した悟空に八戒が心配そうに尋ねる。 「…ん、大丈夫…」 ゆるゆると頭を振って、幼い仕草で目を擦り、はんなりと悟空は笑ってみせた。 「そう、ですか?」 悟空が差した皿を前に持っていってやりながら、八戒は優しい笑顔を浮かべた。 「お前、それ喰ったら寝ろ」 見かねた悟浄がそう言えば、悟空はこくんと素直に頷き、 「…そうさせ、て…」 言いながら、ことりと眠ってしまった。 「相変わらず軽いですねぇ…」 八戒が進む先のドアを開け、寝室のベットの掛布をめくりながら悟浄が笑う。 「…悟浄」 緊張した声で呼ばれて、八戒の手元を覗き込んだ悟浄の表情が固まった。 しばしの沈黙。 そして───── 「…参ったねぇ」 大きなため息が二人の口から零れた。 「いいんですけど…」 その痕が二人の愛し子にある。 「ほどほどって…無理なんですかね」 苦笑を漏らす悟浄を見上げて、八戒はもう一度大きなため息を吐いた。 「それだって悟空が幸せなら問題はないって思ってるくせに」 八戒は諦めたように肩を落として、悟空に掛布をかけてやった。
夕方迎えに来た三蔵が散々、八戒に嫌みを言われ、悟浄からかわれたのは言うまでもない。 |