scenery 〜 epilogue 〜

「ただいま!」

満面の笑みを浮かべて帰ってきた悟空の姿に二人の帰りを待ちわびていた者達の顔が綻ぶ。

「楽しかったですか?」

天蓬が訊けば、

「すっごい楽しかった!」

まろい頬が桜色に染まった。

「何か面白いモノは見つかったか?」

捲簾が髪を掻き混ぜれば、

「うん!オルゴールっていうの見つけた。そんで、買って貰った」

黄金の華が輝き、白磁の小さなオルゴールが小さな手に載った。
そっと蓋を開ければ、地上と同じ耳に馴染む柔らかな音色が、ぽろりぽろりこぼれ落ちる。

「よかったな、チビ」
「うん!」

頷く容が興奮に輝いた。

「お腹は減っていませんか?」

二郎神の言葉に、悟空のお腹が盛大に鳴った。

「すぐに用意をさせましょう。その間に手と顔を洗って来なさい」
「はあい」

オルゴールの蓋を閉め、それを金蝉に渡して、悟空は洗面所へ駆けていった。
その後ろ姿を見送って、観世音菩薩が金蝉に笑って見せた。

「連れて行って良かっただろう?」
「ああ…地上があいつの居場所だ」
「手放すのか?」
「……うるせぇ…」
「なら、大事にしてやれ」

菩薩はそう言ってもう一度笑うと、皆を引き連れて帰って行った。











用意された食卓につく。
二人で出掛けた興奮が未だ冷めやらぬ養い子と共に金蝉は用意された夕食の食卓に着いた。

「あのおもちゃ屋さん、凄かったね」
「ああ…」

いつもより弾む会話。

「あの洋服、お前に似合ったな」
「そっかな?」
「ああ、よく似合った」

いつもより重ねる盃。

「あの大道芸…っての面白かった」
「そうだな、でも、お前でも簡単にできそうだったぞ」
「できねぇって」
「そうか?」
「そうだよ」

いつもよりすすむ食事。

「肉まん、美味しかった」
「そうか」
「うん…」

食事が終わる頃、

「夕焼け、本当に綺麗だったね」

浮かべる笑顔が潤む。

「本当に、下界は綺麗だったな」
「うん…うん、金蝉…」

飛びつく膝に、未だ軽い身体を座らせて、

「…また、連れってやるよ」

約束を唇に載せた。

「うん…楽しみにしてる」

答える声まで潤んで。
この日、二度目に抱き上げた養い子の身体は羽のように軽かった。




end

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