雨の降る日の二人 (2002.5.7/寺院時代)
しとしとと降る雨の中、子供が一人植え込みの前に立っていた。



その姿を見つめる紫暗の瞳。



振り注ぐ銀糸の雨にその大地色の髪は濡れそぼり、華奢な姿は消え入りそうで、思わず三蔵はその手を伸ばした。

触れた身体はほんのりと暖かく、生きていることを抱き込む腕に伝えてくる。

不意に抱き込まれた意味がわからず、悟空は不思議そうに三蔵を見上げた。

自分を見上げる透明な金色の瞳に何も言わず、三蔵は柔らかな口づけを落とす。

降り注ぐ口づけに悟空はくすぐったそうに顔をほころばせ、三蔵の胸元に頬を甘えるようにすり寄せた。

三蔵は濡れた大地色の髪に頬を着けると、吐息の声で悟空に囁いた。

その言葉に、悟空は花がほころぶような笑顔を浮かべ、三蔵の耳元に唇を寄せると、幸せそうに返事を返した。

その答えに一瞬、紫暗の瞳が見開かれ、ついで愛しげな光が満ちた。




五月雨の降る日のとある風景───




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