花祭り (2003.4.8/寺院時代) |
三蔵が着飾って、超不機嫌な顔で花祭りに出掛けて行った。 で、「笙玄がちょっと覗きますか?」なんて誘うから、 俺は初めて寺の行事の日に寝所から出た。
笙玄に連れられて三蔵の様子をお堂の影から見てた。
花の祭壇に祀られたお釈迦様の銅像に、三蔵は小さなひしゃくで 甘茶って言うのをかけては、よく通る声でお経を上げていた。 花唐草の薄い桜色した衣に金と深紅の糸で織り上げた袈裟を纏った三蔵は、 回りで満開になった桜の花と春の陽ざしに輝いて、 何て言っていいのかわからないくらい綺麗だった。
三蔵が何かするたびに、見てる人が感嘆の声を上げる。
凄い。 あのとてつもなく綺麗な人が、俺の太陽だ。 そんで、俺にだけ優しいんだ。 それって、すっげー。 奇跡みたいだよな。 ううん、奇跡だよ。 その上、恋人だったりして……。
ぽかんと見とれてたら、三蔵が俺の方を見た。
気が付いた時には、遅くって、しっかり目が合ってたりして…。
慌ててそこから逃げて、部屋へ戻った。 開け放った窓から、散り始めた桜の花びらが入り込んでいた。 俺はその傍に座り込んで、綺麗な三蔵を思い出して笑った。 俺のなんだぞって、叫びたいほどになんだか嬉しかった。
その夜、約束を破った罰だって、朝まで寝かせてもらえなかった上に、 次の日も一日、寝台から出られなかった。
三蔵の…バカ。
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