「天ちゃん、これおいしい」
「それは嬉しいです。頑張って作った甲斐があります」
「マジ、お前が作ったのか?」
「ええ、金蝉」「天蓬、これ開けるぞ〜」
「いいですよ」
「それなあに?」
「新酒。この間下界に行った時に持って帰ってきたんだよ」
「ほれ、金蝉、お前も飲め」
「あ、ああ」
「って、どーしたの?」
「捲簾、この五段重ねの弁当、本当に天蓬が作ったのか?」
「信じてねぇんだ」
「当たり前だ。あの無精が服来て歩いてるヤツが、作るとは思えんだろうが」
「金蝉、この唐揚げうめぇ」
「そうか、よかったな、悟空。じゃなくて」
「作ってたよ〜悟空が喜ぶからってさ」
「天ちゃん、ありがとう!」
「いいえ、悟空」
「俺も手伝ったから証人だよ、金蝉」
「捲兄ちゃんもありがと」
「お、嬉しいねぇ。愛の抱擁ってやつだな」
「あいのほうよう?」
「そう、愛の抱擁」
「それ、なに?」
「それはな、悟空、愛し…ってぇな」
「変なこと悟空に教えんじゃねぇ」
「そうですよ。綺麗な悟空が汚れちゃうじゃないですか」
「なあ、なあ、金蝉、あいのほうようって何?」
「捲簾……」
「なあ、教えて」
「どうする、お父さん?」
「…つまりだ…ええい、くそっ」
「あらら…実力行使に出ちゃったじゃないですか」
「いいんじゃねぇ?チビは嬉しそうだから」
「そうですね」
「金蝉、あいのほうようって暖かくて気持ちいいんだ、な」
「………あぁ」
咲き乱れる桜の下の幸せな一瞬───
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