水色のマグカップ (割れたカップ番外編/2002.9.4/寺院時代) |
恨めしげな視線を三蔵は、執務机の上の水色のマグカップに注いでいた。
同じものを三つ。
「今、開店記念でお買い上げの商品にお名前を入れさせて頂いています。どうなさいますか?」 などと言われ、拗ねた悟空が喜びそうだと、魔が差したとしか言いようがなかった。 「入れてくれ」 差し出された紙に『ごくう』『しょうげん』と書いた。 「もう一つには何も入れなくてよろしいんでしょうか?」 そう聞かれれば、入れるしかなく。
寝所の何処かに隠して、永遠に封印するはずだったのに。
使わないと、言い切れない自分が情けなかった。 三蔵は、眉間の皺を深くしながら、諦めたように水色のマグカップに手を伸ばすのだった。
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