このエロ坊主! (2005.9.17/寺院時代)
夜中、それも日付が変わってずいぶん経った時間に三蔵が漸く戻ってきた。
笙玄は、

「お帰りになられましたなら、声をかけて下さいね」

って、自分の部屋で待っているから、帰ってきたって言いに行かなきゃいけないのに。
でないと、笙玄が寝られないのに。

なのに何?

この異様に陽気なでっかい子供は

帰ってくるなり、俺をぬいぐるみみたいに抱きしめて、振り回して、逃げようと暴れたらちっちゃい子供みたいにむくれた酔っぱらい。



信じらんねぇ…



その上、

「可愛い俺の悟空ぅ」

って、どこにキスしてんだよ。



ちょ、ちょっと、やだって。



抵抗する俺を今度は抱き枕みたいに抱き込んで、ただでさえ伸びたTシャツの襟を伸ばして項に吸い付く。

「さ、さ、さ、さんぞ─っ!」

身を捩って吸い付く金色の頭を押しのけようとした途端、背中に三蔵の全体重がのし掛かった。
幸い床に半分座り込んでいたから衝撃は少なかったけれど、俺は三蔵を背中に背負ったまま床に潰れた。

「…ってぇ」

手で身体を支えられなかったお陰でしたたかに頭か、肩をぶつけた。
痛みを堪えて三蔵の腕から這い出せば、三蔵は寝こけてた。

「…もう…何なんだよぉ…この酔っぱらいエロ坊主はぁ…」

完全に伸びきったTシャツの襟を摘んで俺は盛大なため息を吐いた。
もう、このままここで寝てれば良いんだ。
明日の朝、起きて、今の状態を見て、反省したらいいんだ。

「三蔵のバカ、酔っぱらい、エロ坊主」

俺は床に転がった三蔵をそのままにして寝た。
翌朝、すっげぇ不機嫌な三蔵が、長椅子で煙草ふかしてた。

知ってる?
それ、自業自得っていううんだよ、三蔵。




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