夜のお誘い (2005.10.13/外伝) |
「なあ、金蝉…俺とシて?」 一日の終わり、夜の帷の中、養い子が投げかけた問いかけに、金蝉は柄にもなく狼狽えた。 「…何で、そんなことがしたいんだ?」 と、理由を問えば、可愛らしく小首を傾げて子供は金蝉の顔を見返した。 「うんと…天ちゃんがぁ、金蝉にシてもらうと気持ちいいですよ〜って、言ったから」 にこっと、無邪気に笑って子供は答えた。 「俺にお前は何をさせたいって?」 決まっている答えを予測しながら金蝉は気力を振り絞って子供に問う。 「経験があるなら、俺にもシて欲しいの」 ちょこんといつの間にやら金蝉の膝の上に座った子供が嬉しそうに答えた。 「……悟空…」 呆れ返った金蝉の様子に悟空はしゅんと項垂れてしまう。 「俺じゃぁ…ダメ?」 煮え切らない返事しか返せない。 そして、改めなくても子供だ。 いや、その前に犯罪だろう。 しかし、ここで何もリアクションを起こさなければ、それはそれでこの子供の機嫌を損ねることは必至なわけで。 だんだん思考が混乱してきた金蝉は悟空を膝から下ろすと背を向けて寝台に寝ころんでしまった。 「あのな、お前が言うようなことは、もっと大人になってから経験すればいいんだよ。今は、たくさん遊んで、たくさん食べて、寝て、笑っていればいい時期なんだよ」 金蝉の言葉に納得できないと顔を上げた子供の頬に柔らかいものが触れた。 「だから、今はこれで我慢しておけ」 もう一度、今度は反対の頬に柔らかな口付けが触れた。 「金蝉、大好き」 と、甘えた声が返った。
|
close |