人間くさいカーナビ(4) (2005.10.23/parallel) |
『おかえりなさい』 「あ、ああ」 『おつかれさま、三蔵』 「ああ…」 『お仕事大変だった?』 「まあな」 『そっか…じゃ、真っ直ぐ家に帰るんだよな?』 「ああ…」 『了解』 「………」 『さんぞ?』 「…………おい」 『何?』 「今、お前、おかえりとかおつかれさまとか言わなかったか?」 『言ったよ。それがどうかした?』 「ってぇか、何でそんなこと言えるようになった?」 『へっ?…あ、この間車検に三蔵がこのクルマ出した時にさ、車検場の技師さんが、俺のプログラムを弄ってくれて新しいソフトまで入れて最新式にしてくれたんだ。だから、話せる言葉も地図も増えたんだ』 「……そう…か」 『えっ…あ、い、嫌だった…?』 「いや、機能が増えるのはいいことだ」 『……うそ』 「ああ?」 『怒ってる…絶対、怒ってる』 「怒ってねえ」 『ウソだ…お、俺が最新式になったのが気に入らないんだ』 「何だと?」 『せ、せっかく三蔵が使いやすいようにって思ってい、弄ってもらったのに…』 「ご、悟空?!」 『いいもん!元に戻してもらう!三蔵が気に入らないままなのは嫌だから!』 「な、何もそんなこと言ってねぇだろうが」 『言ってるもん…気に入らないって言ってる…』 「悟空!」 『ふぇ…』 (画面が揺らいだと思う間もなく、電源が落ちた) 「おい、悟空、悟空!」 (何度スイッチを弄ろうと電源が入らない) 「……っ!」 (苛々とハンドルを叩き、散々逡巡した後、三蔵はハンドルに顔を埋めたまま呟いた) 「……気に入らないんじゃねえよ」 (それでも電源が入らない) 「…………気に入らねぇよ…」 (電源が入るが、画面は砂嵐のままで) 「…………俺に黙って弄らせるな……バカ」
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