クリスマス (2005.12.25/寺院時代)
「なあ、この間行った街、なんであんなにきらきらしてたんだ?」

それは、夕食の時。
年末の忙しさが一休みした日のことだった。

妖怪退治に人手が必要で、三蔵が珍しく仕事先に悟空を伴って行った出先の街。
そこには西の宗教も東の宗教も混在する街だった。
もうすぐ神の子の聖誕の日。
東も西もなく、異教の隔たり無く、街中がお祭り気分に染まっていた。
家々を飾る様々で色とりどりの電飾や商店を彩るディスプレイやネオン。
見る物全てが綺麗で、悟空には夢の世界のように思えたのだ。
もっと、見ていたいとも思ったが、仕事が終われば長居は無用で、三蔵は引き留める寺院の誘いを断って早々に帰って来たのが、先週の終わりだったのだ。
三蔵が妖怪退治の報告を寺院にしている間、悟空は寺院の山門に座ってずうっと、光に彩られた街を見つめていた。

何故、これほどに飾るのか。
何がそんなに待ち遠しいのか。

本来の理由など想像も付かない悟空は、ただ、ただ綺麗で不思議な光景に見惚れていたのだった。

寺院へ帰ってきてもその疑問は深まるばかりで、我慢できずに三蔵へ質問を投げかけたのだった。
悟空の問いかけに三蔵は、軽く瞳を眇めた後、面倒臭そうに、どうでも良いことのように答えた。

「異教徒の神の子が生まれた日を祝うためだよ」
「ふうん…お祝いなんだ」
「ああ…」
「じゃ、三蔵の誕生日を祝うのと同じか」
「…な?!」

悟空の言葉に三蔵は持っていた茶碗を取り落とし、暫し固まった。
その様子を不思議そうに見つめる悟空の姿と、笑いを必死になって堪える笙玄の姿があった。

が、誤解を解いたかどうかは定かではない。




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