雪の褥 (2006.2.8/旅の途中) |
雪降り積もる大地を褥に眠ろう。 たくさんの血を流し、想いを引きちぎってきた。 生きる意味など見つけることもなく、ただ、暗い部屋で生きてきた。 あの日、あの人の気紛れか、慈悲か、世界を与えられた。 出逢った彼女(ひと)は柔らかな陽の光のような女性だった。 何かを求めても手にはいるのは儚い幻と知らなかった痛み。 あの金色に出逢うまではそう思っていた。 あの生命に溢れた透明な金色。 あの幼子に出逢って初めて世界に陽が射した。 大地母神が愛し子。 隔離された世界から踏み出した時、既に金色の太陽も幼子も世界から消えていた。 再開した時、己の手は神と呼ばれた矮小な者達の血で濡れていた。 新天地への誘いも求める心も全ては幼子のため。 人と天人との血が己を蝕む。 崩れてゆく創りかけの世界で刃を交え、血を流し、叫ぶ。 降り積もる白い雪を褥に消えて往く小さな背中に想いを告げよう。 手に入れた願いと共に───
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