お迎え (2006.12.8/parallel・from Gap)
「遅い」

ぶすくれた顔で雪の中、コートを持って迎えに来た三蔵に怒鳴れば、三蔵は何も言わずにコートを悟空にかけた。

「遅いじゃんか、俺が電話してから何時間経ったと思ってるのさ」

むくれた顔で文句を言いながらコートに手を通し、ボタンを止める。
その言葉に三蔵は呆れたため息で応えた。
そして、少し苛ついた声音で続ける。

「何言ってやがる。何処で待ってるとも言わねぇで、探すこっちの身にもなれってんだ」
「何で?GPSついてんだから、探すのぐらい簡単じゃん」

反論して睨んでくる三蔵に悟空は、先程までのぶすくれた顔が嘘のように、楽しげな顔で三蔵を見上げる。
その楽しそうな笑顔にどうしようもない脱力感を三蔵は感じた。

分かっているのだろうか。
自分がどういう立場で、どういう危険に常に晒されているのか。
ボディーガードである自分を撒くような行動ばかりとって。

「あのな…」

何と言って言い返したらいいのか分からないが、胸に湧いてくる怒りにどうしてくれようと、思う三蔵の首筋にふわりと突然、腕がかかった。
そして、

「寒い。暖めて三蔵」

と、誘うような顔つきで悟空が見返してくるから三蔵は固まるしかなくて。

「ほら、暖めてって。こうやってさ」

三蔵の腕を自分で腰に回して、笑う。

「……悟空」
「さぁんぞ」

もう一度、悟空は三蔵に笑いかけると、その首筋に腕を回し、抱きついた。
三蔵は悟空によって、悟空の腰に回された腕にそっと力を込めて、冷えてた華奢な躯を抱きしめたのだった。



降りしきる雪の日の─────




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