大地の友達 (2002.10.26/寺院時代)
帰り道、悟空は大地の友達を見つけた。
片方の翼を広げたまま、じっと悟空をその瞳で見つめていた。

「ケガ、したのか?」

悟空が近づくと、その子は動かない翼をはためかせて悟空から離れようとする。

「何も…」

差し出した手が、止まった。
声が、聞こえた。



───触らないで…



怯えた声だった。
悟空は、困ったような表情を浮かべて、そのこの前にしゃがんだ。

「誰かに酷いことされたの?」

じっと、丸い円らをその澄んだ金晴眼で見返す。
そのココロに、通りすがりの人間に石を投げられ、追い立てられる映像が広がる。

「恐かったね」

悟空ははんなりと頬笑むと、もう一度手を差し出した。
瞬間、指先に走る鋭い痛みに、思わず声が漏れる。
その声にその子は、驚いたように顔を上げた。
見上げる金色の瞳に、怯えて傷だらけの自分が映っている。



金色──それは、大地の御子の証。

では、目の前で傷付いた自分に手を差し出しているのは・・・・・。



その子は、ゴメンナサイと、一言鳴いた。
同時に悟空のココロに溢れる思い。



恐怖。

怒り。

哀しみ。

安堵─────



「大丈夫。俺が、きっと治してあげる」

悟空はそっと、その子を抱き上げると、安心させるように笑った。

「大丈夫……」

悟空は呪文のように何度も呟きながら、その子の身体を何度も撫でてやった。
荒れ狂う思いがゆっくりと、安堵の色に染まって、落ち着いてゆく。

「一緒にいてあげるから」

ぽつりと、声が聞こえた。



───ありがとう…



悟空は嬉しそうな笑顔で頷くと、ゆっくりと家に向かって歩き出した。
山の端に掛かる夕日が、大きな鷹を抱いた悟空の姿を赤く染めて、見つめていた。




秋の日暮れの、小さな出会い。




close