おかえり… (2008.6.25/寺院時代・illusted by みつまめ様)
三仏神からの仕事で出掛けていた三蔵が戻ってきた気配がした。
俺は慌てて寝所から飛び出した。
だって、三蔵の気配が物凄く弱く感じたから。

三蔵の弱い気配を追って回廊を走って、辿り着いたのは奥の院の外れだった。 
雨が降る様子をただ立って眺めている、それだけなのに、その姿がいつもとは違って弱っているように見えた。
雨が降っても普段は機嫌が悪くなるだけで、ここまで弱ってる姿は知らないから、俺はかける言葉が見つからなかった。
だから、じっと三蔵の背中を見ているしかなくて。
それが、とても辛かった。

と、三蔵が振り返った。

「?!」

びっくりしていたら、手招きされた。

「………さんぞ…?」

小首を傾げながら近づけば、

「……どうした?」

って、訊かれた。

「…ぇ……?」
「何、泣きそうな顔してる?」
「…な、何でもない……よ?」
「そうか?」
「う…ん…」

頷けばくしゃりと、頭を掻き混ぜられた。
そして、ぽんぽんと宥めるように叩いて離れる手に、思わず縋りついた。

「悟空…?」

俺の行動に三蔵が驚いた顔をするのを構わず、ぎゅっとその手を抱きしめた。

「ご、くう…?」

俺の行動が理解できないと、紫暗の瞳が言うから、

「俺は大丈夫だから…俺は何処にも行かねえから、大丈夫だかんな」

叫ぶように言えば、三蔵は紫暗を見開いた。

「信用しろよ……な…」

疑っているように思えて、さらに言い募った言葉は三蔵の胸に消えた。
ぎゅうっと、俺を抱きしめる腕の力に、俺の言葉が三蔵に届いたとわかって俺は嬉しかった。




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