2.陰陽師で遊ぼう



「何だよ。また、来たのか?」

簀子に座ってひとり酒を呑んでいた青年が、少しうんざりした様子で庭先に現れた青年と少年を見やった。
単衣に薄紅色の袿を羽織っただけの様子に、庭先に現れた青年がため息混じりに声をかけた。

「暇そうだな?」

その声に嫌そうに顔をしかめる。

「図星か?」

問えば、青年は庭先に立つ青年に向かって持っていた盃を投げ付けた。
青年は避けもせず立っている。
盃は緩く放物線を描いて青年のずいぶん手前で落ちた。

「違うよ。怒られたんだ」

青年の傍らに立つ少年が面白そうな顔をして簀の子に座る青年を見つめて言った。

「ああ?!」

少年の言葉に傍らの青年が理由が解らないと顔を向ければ、

「あのね、俺達と逢ってるのを同じ陰陽師の誰かに見られたんだ。んで怒られたんだって」

少年の言葉に今度は丙子が飛んでくる。

それを傍らの青年が受け止め、中の酒を呷った。

「妖と逢ってる陰陽師ってか?」

くすくすと喉を鳴らして笑い、また、青年が酒を呷った。

「喧しいっ!!」

怒鳴り声と一緒に高坏(たかつき)が投げ付けられた。
それを少年が受け止め、簀子の青年に音もなく近づいた。

「怒んないでよ。別に闇に堕ちた訳じゃないし、どっちかって言うと格が上がったんだからさ」

はい、と高坏を青年の足許に置いて、高欄に座った。

「あのな…お前が思うほど簡単じゃねぇんだよ」

頭を抱えるように俯くと、青年の髪がさらさらと肩から流れ落ちる。



以降、本文にて

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