「おい、いつからここは託児所になった?」 執務室から疲れて戻ってきた三蔵は、扉の前でげんなりした顔で傍らの笙玄に告げた。 「たぶん…ついさきほどからだと、思いますが…」 答える笙玄も寝所の居間のあまりな惨状に、声が虚ろだった。 そう、目の前に広がる光景は、きれい好きの笙玄の神経を逆なでするために故意に作られたとしか思えない状態だったからだ。 「…笙玄…」 笙玄を呼ぶ三蔵の声が震え、今にも爆発しそうなマグマを孕んでいる。 「はい」 そう言う三蔵の低い声に、脳天気な声が被さった。 「あ、お帰りぃ」 ぱたぱたと散らかったものをよけて、湯殿から出てきて、三蔵に近づいた。 「──…ってぇ!」 頭を抱えて悟空はその場に踞った。 「てめぇ、このバカザル──っ!今すぐ死にやがれ!」 三蔵の怒鳴り声に、悟空は涙で潤んだ瞳で三蔵を睨み返した。 「喧しい!何だってんだ、あのガキ共は!!」 三蔵の言葉に悟空は、きょとんと三蔵を見返した。 「ああ、あのガキ共だよ!」 指さす方を見れば、自分より幾分幼い年頃の子供が三人、固まって座り込んでいた。 「お前ら…人間だったんだぁ!」 悟空の言葉に今度は、三蔵がきょとんとする番だった。 「人間だった、だと?」 嬉しそうに悟空は、床に固まって座り込む子供達の顔を覗き込んだ。
以降、本文にて |