1.お花見
とっておきの場所の桜の木の下。 「もう散り始めているようですね」 ひっきりなしにはらはらと舞う薄桃色の花びらを見やって八戒が呟く。 「違うよ、まだ、満開になってないよ」 桜の木の中程まで昇った悟空の声が、上から降ってくる。 「え、でもこんなに散ってますよ」 声の方を見上げて八戒が問えば、 「喜んでるだけ。もうすぐ止むから」 と、悟空の笑いを含んだ声が返る。 「本当に止んだぞ」 地表近くの枝に腰掛けて盃を傾けていた悟浄の声が、呆れに彩られて斜め上から聞こえた。 「ええ…本当に。それにこの木はまだ、満開じゃなかたんですね」 悟浄の声に頷きながら八戒は、桜の木を見上げた。 「今、満開になる」 三蔵がクソ面白くもないと言う顔で答えた。 「はい?」 八戒と悟浄が何を言っているのかと、三蔵を見やった時、三人の頭上から悟空の歓声が聞こえた。
以降、本文にて |