煙 草
三蔵はたくさんの煙草をいつも吸っている。

仕事の休憩の時、ご飯を食べる前と食べた後、新聞を読んでる時。
それから、仕事をしてる時と苛々してる時。

そう言う時は、煙草の吸い殻が灰皿に山のようになっていて、たくさん吸ったことが分かる。
それに、三蔵の身体からもきつい煙草の匂いがするんだ。
せっかく、笙玄がイイ匂いのお香って言うのを三蔵の着ているモノに炊いてくれているのに、それが消えちゃってる。

三蔵の匂いは、煙草の匂いにお香の薫りの混ざった、柔らかくて独特。
時々甘くて、時々苦くて、ほんの少し墨と紙の匂いもする。
それが三蔵の匂い。
俺の大好きな三蔵の匂い。


後は───


お風呂上がった後と・・・・寝かせてもらえなっかた翌日の朝。
その時は、三蔵にも責任があるからって、起きたら必ず傍にいてくれる。
嬉しいけど、なんか恥ずかしい。
俺を見てる三蔵の視線が優しいのも原因かも。

で、煙草は俺が起きた時にはもう吸ってる。

「おはよう…」

って俺が言ったら、煙草の苦い唇が降ってくる。

普段は、俺が起きた時には、三蔵はもう起きて仕事に出てしまってるから、朝、煙草を吸ってるかどうかよく分からない。
でも、寝台の横に置いてある灰皿に吸い殻がひとつ残ってるから、毎朝、必ず吸ってるんだと、思う。

この間、笙玄が

「煙草の吸いすぎは、お体に障ります」

って、三蔵を怒ってたけど、三蔵は知らん顔してた。
あの後、笙玄に、

「煙草って毒?」

って、訊いたら、

「過ぎれば毒になります。でも、ほどほどは精神安定剤にもなるんだそうですよ」

って、困った顔で、答えをくれた。

確かに、三蔵って煙草たくさん───でも、機嫌が良い時とか、少ない時もあるから良くわからないけど、三蔵が部屋に戻ってきただけで、部屋全体が煙草の匂いで一杯になるのはやっぱり嫌だし、三蔵が病気になるのはもっと嫌だ。

だから俺、ちょっと三蔵に煙草を吸う回数を減らす努力をしてもらおうと思う。
最近、本当に煙草を吸う本数が増えてるから。
三蔵には元気でいて欲しいから、ちゃんと頼んでみようと思う。

三蔵、言うこと聞いてくれるといいな。

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