向日葵 |
夏の陽差しのような笑顔。 大輪の向日葵のようなアイツの輝き。 いつの間にか気持ちの奥底に住みついた子供。 拾った時、全てを諦めていた。 人も通わぬ山奥の頂きに設けられた岩牢で踞っていた。 四季折々の変化や些細な日常の発見、経験。
「三蔵はね、俺の太陽なんだよ」
そう言って陽差しの中で笑うその姿こそが太陽だと、何度思っただろう。 時に不安定で脆く、時に頑固で、誰よりも強い。
そんなアイツが、日のよく当たる奥の院の庭先に小さな花壇を今朝から笙玄と一緒に作っている。 「市場で見つけたのです。まるで悟空そのものの様な気がしましたので、つい…」 照れくさそうに笑って笙玄が昨日、俺に差し出したのは向日葵の種。 アイツに対して思うことは、皆同じらしい。 「それで…あの、奥の院の庭にこれを植えてもよろしいでしょうか?」 遠慮がちに伺いを立ててくる笙玄に、頷くことで許可を出した。 それでもそんなことが嬉しいのか、何度も俺の方を振り返っては嬉しそうに笑いやがる。 しかし、アイツはどう贔屓目に見ても、笙玄の邪魔をしているとしか見えない。 そして、嬉しそうに向日葵の種を植える向日葵の子供。 この夏は大輪の向日葵の花とそれに負けないアイツの笑顔が拝めるらしい。 |