新 聞 |
新聞って何が面白いんだろう。 難しい字がたくさん書いてあって、それも細かい字でびっしり。 三蔵は毎日、新聞を読む。 仕事の邪魔をすると怒られるのは当然でも、新聞を読んでいる時に邪魔しても怒られる。 俺だって構って欲しいのに。
夕食の後、三蔵は今日は忙しいとかで、また、仕事に戻って行った。 今日はまだ、三蔵は新聞を読んでいない。 お風呂に入って、先に寝てろって言われてるから、先にお風呂に入って。 濡れた髪を拭きながら新聞を見下ろせば、垂れた雫が新聞の上に黒くて丸いシミを作っていく。 「お前は、どんなに遅くなっても三蔵、読むんだよな…」 馬鹿げたことだと想う。 俺がどんなに構って欲しくても、仕事だ命令だって、振り返りもしないで三蔵は出掛けて行く。 我が侭だって分かってる。 コイツは何があっても、絶対、三蔵に必ず構って貰うんだ。 今夜も俺が眠った後、仕事の終わった三蔵が寝る前に、新聞を読むんだ。 「…三蔵は俺のなのに……」 シミだらけになった新聞。 「お前なんか、嫌いだ。構ってくれない三蔵も嫌い」 マジックを放り出し、俺はちょっと、すっきりした気分になった。 俺を一人にする三蔵なんて、嫌い。 |