ささやかな風景 #1

綺麗に紫陽花が咲きました。
今年もまた、雨の季節が参りました。
雨に濡れて色を増した紫陽花の可憐な美しさは、まるで三蔵様と悟空の姿に見えます。
静かに寄り添って、ただお互いだけを見つめて。
世界に二人だけしかいないような、そんな哀しさを感じます。
頼るものがお互いしかいないと、そう肩肘を張っていらっしゃる姿は儚げで、触れればぽきんと折れてしまいそうに見えます。
雨の季節になりますと、そのお姿や雰囲気が顕著になって…。
そして、雨の季節は三蔵様を気鬱にさせてしまうようです。

「………三蔵がさ、泣いてるみたいに見える…」

山紫陽花の花を居間に生けた時、それをみた悟空がそう言っていたことを思い出します。
何が三蔵様を気鬱にさせるのか、私には計りかねますが、そんな三蔵様のお姿を見つめている悟空の姿が、この山紫陽花の姿に重なって私には見えました。
雨の季節ではありますが、晴れた日もたくさんあります。
どうか、そんな日にお二人の気鬱が晴れますように、私は願うばかりです。

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