ささやかな風景 #11

「はい、そっち持って下さい」

笙玄に言われて包帯の端を持つ。

「そのまま部屋の端へ行って下さい。あ、ねじれないように気を付けて下さいね」

にっこり笑っているその笑顔が怖い。
怒ってる。
うん、絶対に怒ってる。

包帯をめちゃくちゃにしたし、三蔵の書類もくちゃくちゃにした。
でもさ、包帯は俺だけど、書類は三蔵が悪い…と、思う。
けど…驚かせたのは俺だから、俺の所為?

「悟空、よそ見をしないで下さい」

声が冷たい。
謝る機会を見つけられなかったから、なおのこと怖い。
三蔵は見てるだけだし。

それに、笙玄の誕生日だったこともすっかり忘れて浮かれていたことも、今朝になって気が付いた
何も笙玄は言わないけど、三蔵も何も言わないけど…。
いつ、ごめんなさいって言えるんだろ。

「悟空、そのまましっかり持っていて下さいね」

声が優しくて冷たい。
ごめんなさい。

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